アドテクノロジー(アドテク)の技術だけを学んでも、実際のマーケティングの業務に生かせるとは限らない。なぜそうした技術が必要とされ、どう役立てるのかを理解しなければ、継続的な成果を出し続けることは難しい。デジタルマーケティング(デジマ)の本質とは何か。先輩社員ヒロセが解説する。

アドテクノロジーのツールを使いこなすには、マーケティングの全体的なプロセスやさまざまな理論(フレームワーク)を知っておく必要がある
アドテクノロジーのツールを使いこなすには、マーケティングの全体的なプロセスやさまざまな理論(フレームワーク)を知っておく必要がある
先輩社員「ヒロセ」
ネット広告やデジタルマーケティングに精通する先輩社員。新人ユカの教育係になった。見た目はクールだが、ネット広告の話になると熱くなって止まらなくなる。
新人社員「ユカ」
ネット広告会社に新卒で入ったばかりの新人女性社員。元気とやる気は人一倍あるが、難しい用語は苦手。ヒロセのボケに対して絶妙なツッコミをする。

今回は、これまでにも少し登場したDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)やCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)の機能を取り上げ、各社の比較を説明していこうかと思っていたのだが、やめた。


えっ、どうしたんですか。まさか夏バテ……。


いやっ、そうじゃなくて。これらツール以前に、マーケティングそのものを知ってほしいからだ。DMPやCDPはマーケティングを推進できる人材でないと活用できない。


よい道具だけ持っていても、だめということですね。


決して、DMPやCDP自体が企業のマーケティングを強くするわけではない。これを活用できるマーケターが求められているというわけだ。


 筆者(ヒロセ)が手掛ける仕事の中心軸は「デジタルマーケティング」です。この連載の締めくくりとして、デジタルマーケティングの本質の理解、マーケティングのプロセス、データ活用によってマーケティングがどう変わったのかなど、全3回に分けて解説していきます。アドテクノロジーの連載としては、少し回り道する部分もありますが、その中でDMPやCDPといった技術の勘所も紹介していきますので、ご安心ください。

 「デジタルマーケティングとは何ですか?」とあなたが問われたときに、自分なりの解をもって答えられるようになれたら、それは筆者にとっての成功です。

デジマは「売れる仕組みを作る」

 「デジタルマーケティング=デジタル広告を出す」ではありません。デジタルマーケティングとは、「アクチュアルデータ(Web行動履歴などの全量データ)やリスニングデータ(SNSの投稿・発言などを収集したデータ)を軸に仮説検証を行い、マーケティングのプロセスを構築・改善すること、つまり売れる仕組みを作ること」と定義したいと思います。

 マーケティングのプロセスの中でも、次回以降に解説していくマーケティング・ミックス(4Cや4P)、その中のコミュニケーション・ミックス(≒プロモーション・ミックス)において、伝統的なマーケティング手法よりもデータ活用が進んでいる点が特徴です。

 まずは、マーケティング・プロセスの中の主要なフレームワーク(戦略立案や問題解決のための手法)の理解から始めましょう。

マーケティングの出発点「環境分析」

 マーケティングのプロセスと、それぞれで利用される主なフレームワークをまとめました。下図をご覧ください。

マーケティングのプロセスと、それぞれで利用される主なフレームワークの一覧(図の画像提供/デジタルマーケティングラボ)
マーケティングのプロセスと、それぞれで利用される主なフレームワークの一覧(図の画像提供/デジタルマーケティングラボ)

 以下、各プロセスのフレームワークについて簡単に解説していきます。

 「環境分析」では商品や業界(商品群)を取り巻く環境が現在どうなっているか、将来どうなるかを予測します。そのためのフレームワークの中でも「PEST分析」「5F分析」「3C分析」は言葉を知っている方も多いと思いますが、この視点が抜けるマーケターは意外と多いと考えています。ここを基本として押さえておけば、マーケターとしての差異化ポイントになるでしょう。

・PEST分析

 マクロ環境の分析として有名な手法です。商品や業界を取り巻く環境を「Politics(政治的要因)」「Economy(経済的要因)」「Society(社会的要因)」「Technology(技術的要因)」の4つに分類し、現在の状況把握と未来予測を行います。

・5F(ファイブフォース)分析

 業界環境を分析するための手法です。PEST分析よりも粒度が細かいミクロ環境分析の1つです。自社商品を取り巻く脅威を「業界内競争(競合企業)」「新規参入企業」「供給企業」「顧客」「代替品」の5つに分類し、業界の収益構造や現在および将来的な脅威の度合いを可視化することに利用されます。

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