ミツカン子会社のZENB JAPAN(愛知県半田市)が展開するD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)事業「ZENB」が好調だ。麺製品「ゼンブヌードル」は2020年9月30日の発売から約10カ月で累計販売数が100万食を達成。その後、21年12月には2倍となる200万食を突破した。成長の一翼を担うのがInstagramやTwitter上のUGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ)だ。顧客のUGCから商品の“使い方”を学び、3つの方法でマーケティング活動に生かすことで広告効果を高めている。

ミツカン子会社のZENB JAPAN(愛知県半田市)が展開する麺製品「ゼンブヌードル」は2020年9月の発売から約10カ月で販売数100万食を達成。その後、わずか4カ月で2倍の200万食を突破した
ミツカン子会社のZENB JAPAN(愛知県半田市)が展開する麺製品「ゼンブヌードル」は2020年9月の発売から約10カ月で販売数100万食を達成。その後、わずか4カ月で2倍の200万食を突破した

 ゼンブヌードルの広告の誘導先であるランディングページ(LP)には、メインビジュアルとして、丼に盛った麺の上に卵を乗せて、しょうゆをたらした調理画像が掲載されている。「釜玉うどん」の調理法としてよく知られる。

 実はこの調理方法、発売当初は提案メニューの1つにすぎなかった。顧客がInstagram上にこの調理法の写真を多く投稿していたことをきっかけに、より受け入れられやすいと判断して強く訴求し始めた。ゼンブヌードルのヒットには、InstagramやTwitterを活用した顧客との共創型マーケティングが大きく貢献している。

 その具体的な手法を説明する前に、まずはZENBというブランドのミツカンにおける位置付けをご理解いただきたい。ZENBは2019年にミツカンが展開を始めた直販型の新事業だ。黄えんどう豆を100%使った、高タンパク質、高食物繊維の商品を中心に展開する。エッジの立った商品かつ高付加価値商品のため、従来の小売店を介した販売ではなく、顧客とデジタルでつながり、価値を正しく伝えながら商品を届けるD2C事業として展開している。

 ゼンブヌードルはZENBブランドの中でも、市場の大きい主食市場を取りにいく主力商品だ。高タンパク質、高食物繊維でありながら、パスタや米よりも糖質は低い、健康的な食材である点が手軽な健康食品として人気を集め始めている。1食単位で麺がビニールテープでくくられた包装や、そのパッケージデザインなど、見た目の印象はパスタに近いものの、和・洋・中を問わず使える全く新しい麺製品だ。

 とはいえ、それはあくまで企業視点だ。消費者にとっては全く新しい麵製品のため、調理法を併せて提案していく必要がある。発売当初はパスタソースを同時に発売したことから、ZENB JAPANでもパスタ風の調理方法を打ち出していた。ただ、発売後に購入者がInstagramに投稿したUGCのうち、特に目を引いたのが前述の釜玉風の調理法だった。

 商品自体が目指す目標はパスタの代替ではなく、主食市場を取りにいくこと。パスタ風の調理はあくまで提案の1つだった。そこにユーザー主導で、いち早く和食、すなわち釜玉風の調理法が広がったわけだ。他にもラーメン風や担々麺風など、顧客がさまざまな調理法をInstagramに投稿していた。

 ミツカンはこれを商機と捉えた。顧客の手を借りれば、すぐにでもマーケティングに取り入れられるからだ。これがUGC活用を後押しした。

 UGCの活用法は大きく3つある。1つ目は広告活用だ。ユーザーの許諾を得た上で、SNSに投稿されている写真を直接広告のクリエイティブに採用している。「ユーザー視点の写真は、撮影方法も含めて企業発では出てこないクリエイティブになる」とZENB JAPAN新規事業開発ダイレクト戦略チーム広告担当の松永友貴氏は言う。良い意味で素人らしさのある写真を使うことで、SNSと親和性の高い広告になる。

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