2023年2月をもって実施終了しております
 

いまも昔も人気のお酒といえばビールですが、最近はコロナ禍により飲み会が少なくなり、ビールと触れ合う機会が減少。以前と比べて、若者とビールの接点が弱くなっていました。その中で、企業にとっては「若者とビールの距離」をどう縮めていくかという課題が芽生えていました。

アサヒビールの主力ブランド「スーパードライ」では、こういった状況下で若者向けのLINEの販促プロモーションを検討していました。そこで、私たち電通が目をつけたのが、若者のLINEの利用特性。それを「スーパードライ」と結びつけ、若者とビールの距離を近づけるコミュニケーション施策を考えたのです。名づけて「SHARE SUPER DRY」。その内容をひと言でいうならば、「一杯おごるよ」のDXです。以下にご紹介します。

3つの課題のもと、若者のLINE利用パターンを分析して施策が誕生

まずはこの施策が生まれた経緯から説明します。アサヒビールから電通に依頼が来たとき、大きく3つの課題背景が語られました。

1つ目は、若年層の飲酒機会が減少する中、アサヒビールでは、新しい「スーパードライ」のブランドイメージを醸成し、なおかつ、これまでのアプローチにはない、若者に届く「新しい機会」を提供したいというニーズがあったことです。

2つ目は、コロナ禍で薄れてしまった、ビールの「コミュニケーションツール」としての機能をふたたび発揮させることです。ビールは美味しいお酒としてだけでなく、目の前の人と一緒に味わうことで、時には言葉以上に気持ちを分かち合えるコミュニケーションツールの役割があったはずです。

しかし、コロナ禍で外飲みの機会は減少。その中で、ビールによって心が通じ合うという魅力を失いたくない思いがアサヒビールにはありました。そこで、人が集う外飲みではなく、離れた場所にいる人同士の間でも、「スーパードライ」をコミュニケーションツールとして機能させられないか、検討が続いていたのです。

3つ目の背景は、こういった課題感の中で、「スーパードライ」がLINEを使った施策を模索していたことです。ただし、よくある広告や割引キャンペーンなど、単なるLINEの販促プロモーションにとどまらない、新たな購買行動をLINEで実現しようと考えていました。「スーパードライ」のパーパスである「気持ち高まる瞬間を分かち合う」を、LINEによって生み出したいという思いがあったのです。

開発の背景1

若年層のビール離れ

新しいブランドイメージの醸成に加えて従来のように他社との差別化に躍起になるのではない、若者に届く新しい機会の提供が求められていた

開発の背景2

コロナ禍でビールとの距離が発生

言葉以上に気持ちが届くビールのコミュニケーションツールとしての役割を離れた2人においても機能させるため何ができるか、コロナ禍で検討が続いていた

開発の背景3

LINEの友だちとの新たな接点構築を検討

「気持ち高まる瞬間を分かち合う」というパーパスを持つスーパードライは、単なるLINEの販促プロモーションにとどまらない、新たな購買行動を模索していた

この3つの背景をふまえて、電通では「スーパードライ」のLINE施策を考え始めました。企画を検討するにあたり、今回のターゲットである若者がLINEをどう使っているのか、改めて詳細に分析。その中で、施策のヒントを見つけました。

そのヒントとは、こういうものです。通常の企業におけるLINEのプロモーションでは、友だちに追加すると割引が適用されるなど、基本的に“価格を下げる”ことでファンを繋ぎ止める事例が多いと言えます。一方、若者一人ひとりのLINE利用パターンを見ると、多くの人が会話に使うスタンプをわざわざお金を払って買っています。つまり、若者は「コミュニケーションの充実」のためになら、LINE上でお金を払っている面があるのです。

だとすると、コミュニケーションにお金を使うという若者のLINEの利用特性を活かせば、従来のような商品の価格を下げるキャンペーンではなく、新たに商品を買ってもらうキャンペーンを実現できるのではと考えました。そうして生まれたのが「SHARE SUPER DRY」です。

離れた場所でも「一杯おごれる」。新たに商品を買ってもらうキャンペーン

「SHARE SUPER DRY」とは、LINE上で友だちに「アサヒスーパードライ」350ml缶もしくは「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」340 ml 1本を添えて写真やメッセージを送れるサービス。

サービスの仕組みを説明します。まずビールを送る側(送り手)は、年齢認証などを行った後、友だちに送るメッセージを作成。写真やイラストをつけることが可能です。その後、LINE上で決済を行い、「スーパードライ」1缶を購入。送り先の友だち(受け取り手)を選択すると、メッセージが送付されます。

受け取り手は、送り手から届いたLINEのメッセージをもとに「SHARE SUPER DRY」のサイトへアクセスします。するとクーポンが発行され、コンビニエンスストアの店舗で「スーパードライ」1缶と引き換えができる仕組み。なお、メッセージを送ってくれた友だちへのお礼メッセージも送信できます。

コミュニケーションの充実にお金を払うという若者のLINEの利用特性を生かし、なおかつ、ビールが持つコミュニケーションツールとしての機能を離れた人同士にも当てはめました。リアルでは当たり前にあった「一杯おごるよ」という誘いを、LINE上でDXしたサービスだと考えています。

これまでの広告との違い。コミュニケーションの主語が企業ではなくなったこと

シンプルなサービス設計ですが、その中には私たちの強いこだわりがたくさんあります。もっとも大きなこだわりは、このサービスが、LINEを使った広告や販促ではなく、友だち同士で行う日々のLINEコミュニケーションの中に「スーパードライ」が入り込み、ビジネス化したことです。

広告や販促といった従来の売り方は、企業から発信された情報を消費者が受け取っていました。しかし今回のサービスは、企業ではなく友だちから発信された情報を消費者が受け取ります。コミュニケーションの主語が企業から友だちに変わったのです。

信頼できる友だちからもらう情報ですから、企業主語の広告や販促に比べて「スーパードライ」への印象が好意的になり、特別な出会いになります。加えて、クーポン発行時にアサヒビール公式アカウントと友だちになるので、新規ファン化にもつながります。

送り手も、相手にギフトを送るという好意的なマインドで「スーパードライ」を購入するので、通常の商品購入よりも商品への愛着が向上するでしょう。

これまでの売り方は、他ブランドとの差別化を作る過程に多額のコストがかかり、そこまでやっても買ってくれるかどうかわからないのが実情でした。その方法とは一線を画したものであり、前半で述べた、若者に届く「新しい売り場」を実現できたと考えています。

サービス利用者からも好評。これからも新しいアプローチで接点作りを。

サービスの評価も良いものとなっています。利用者へのアンケートを行ったところ、本サービスの満足度については85%が「良い」と回答。83%が「またやりたい」と答えています。

そのほか、使ってみた感想として以下の声が聞かれました。

「単身赴任の主人に、子供たちの写真とメッセージを送り、日頃会えない分、感謝を伝えることができた」
「ちょっとした挨拶や季節のプレゼントにちょうどいいと思います」
「こういったサービスが、コロナの時代のコミュニケーションになればいいと思います」

本サービスを通じ、シンプルな広告ではない、日常のコミュニケーションに商品を載せるという新しいLINE施策の方向性を示せたと感じています。これらは、TwitterやInstagramなど、ほかのSNSでも活かせるのではないでしょうか。私たち電通は、これからも、いままでにないアプローチで商品やサービスと消費者の接点を生み出していきたいと思います。

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担当者:電通 佐野有彦(第5ビジネスプロデュース局)