ファッションブランドは近年、コミュニティ構築のためイベントの活用を推進してきたが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行で集会が不可能になったいま、対面イベントのオンライン化が相次いでいる。オンラインイベントはデータ収集とスケール化の機会をもたらし、旧来のイベントモデルの改善につながるからだ。
ファッションブランドは近年、コミュニティ構築のためイベントの活用を推進してきたが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行で集会が不可能になったいま、対面イベントのオンライン化が相次いでいる。ワークアウトクラスからコーヒーを飲みながらの気軽な集まりまで、ブランドはオンラインでのイベント開催が、単なる急場しのぎのライブイベントの代替ではないことに気づきつつある。オンラインイベントはデータ収集とスケール化の機会をもたらし、旧来のイベントモデルの改善につながるからだ。
対面イベントが不可能になった結果、オンラインイベントはブランドにとって、顧客の人物像や行動を把握し、オーディエンスの拡大のために何ができるかを理解するのに役立つ、貴重なデータを収集する機会になっている。アクティブウェアブランドのブオリ(Vuori)でCEOを務めるジョー・クドラ氏によれば、同社はいち早くオンラインイベントを発足させ、今後数週間で3つのフォーマットが出揃う。ブオリはこれまで、5つの実店舗で週に1〜2度のペースでライブイベントを開催していた。
土曜日を除いて毎日、ブオリはインスタグラム上でワークアウトクラスを開催している。インストラクターは日替わりで、ワークアウトの種類もヨガ、有酸素運動、瞑想などさまざまだ。水曜日にはクドラ氏が、人生のさまざまな側面についてライブディスカッションを行う。4月1日の回にはNBA選手のスティーブ・ナッシュが初のゲストとして登場した。また4月から毎週土曜日に、フィットネス企業のドッグパウンド(Dogpound)と提携して、キツいことで有名なこのジムのワークアウトにクドラ氏が参加し、その様子をライブ配信する。こうしたイベントはすべてインスタグラム上で配信される予定だ。
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毎日のワークアウトクラスのインストラクターは、ブオリが提供する自社のウェアを着用するよう指示されているが、それ以外にこれらのオンラインイベントで明確な製品プロモーションははじめのうちは実施しないと、クドラ氏はいう。ただし今後は、チームが製品プロモーションとイベントを関連づける方法を検討する予定だ。
「顧客に転換できるかどうか」
クドラ氏によれば、インスタグラムでのオーディエンスのうち、新規フォロワーと既存顧客の割合がどの程度なのかはまだ定量化できていないが、新たなオンラインオーディエンスを理解することはブランドにとっての重要目標だ。そのために、同社はユーザーがブオリのアカウントをフォローしはじめたのはいつか、インストラクターやゲストコラボレーターのインスタグラムアカウント経由でブオリのページを訪れたか否か、といったデータに注目する。
「データのなかで我々が重視するポイントは、オーディエンスが誰で、顧客に転換できるかどうかだ」と、クドラ氏はいう。「ドッグパウンドのフォロワーやゲストスピーカーとの相乗効果が出ているかどうかに注目している。顧客として取り込める見込みのある熱心なオーディエンスでも、ブランドを知っているとは限らない。何よりも、イベントをビジネスにどうつなげるかを考えている」。
ブオリはオンラインコンテンツやコラボレーションを倍増させ、新たなユーザーにブランドを見てもらい、顧客に取り込みたい考えだ。
いまのところ、この目論見はうまくいっているようだ。クドラ氏によれば、ブランドのインスタグラムアカウントのエンゲージメントは、3月半ばにワークアウトクラスを配信しはじめてから、わずか2週間で倍増し、売上も伸びた。ブオリの3月のeコマース売上の目標値は前年比100%増だったが、実際には200%も増加したのだ。
対面イベントとは違う利点
D2Cアクティブウェアブランドのイエラ(Yella)の創業者、ダニエラ・ミズラヒ氏は、この先4カ月のマーケティングプランを対面型ポップアップストアを中心に組んでいたと話す。賃貸契約を交わし、1カ月限定のポップアップストアのうち少なくとも1カ所で、ブランドの知名度アップを狙ったフィットネス関連イベントを計画していた。それが白紙になったいま、同氏はデジタルイベントに目を向けている。狙いはこちらもワークアウトで、ロサンゼルスのフィットネストレーナーを起用し、Zoomで配信する。
最新のレッスンは3月末に実施。トリアナ・クリストバル氏がトレーナーを務め、数百人が参加した。メディア関係者や顧客への呼びかけは、イエラのメーリングリストを通じて行われた。ミズラヒ氏は、イベントの本来の趣旨だった、イエラの製品を手にとって見てもらうことはできないものの、オンラインレッスンには別の利点があると話す。
「以前のコンセプトは、デジタルに切り替えたときにすべて放棄した」と、ミズラヒ氏はいう。「完全に焦点を移したのだ。製品の話は一切せず、オーディエンスの構築と理解に全力を注ぐことにした。インストラクターには我々と提携したレッスンを大々的に宣伝してもらい、彼らのオーディエンスを取り込みたいと考えている。対面イベントとはまったく違うが、我々にとって実りあるものであることに変わりはない」。
ミズラヒ氏によれば、同社は週2回、火曜日と土曜日のオンラインワークアウトクラスの開催を計画中で、大勢に繰り返し参加してほしいと考えている。オーディエンスの分析は、中心的なターゲット顧客の理解につながると、同氏は見ている。
「我々がどんなブランドを目指すのかを決めるうえで、彼らが助けになるはずだ」と、ミズラヒ氏はいう。
1万人以上が参加することも
クドラ氏もミズラヒ氏も、イベントをオンラインに切り替えたおかげで、普段では考えられないくらい大規模なものになったと話す。ブオリのインストアイベントは、通常50~60人しか参加できない。だが、インスタグラムのワークアウトクラスでは、1万人以上が参加することも珍しくないとのことだ。
「オーディエンスの実態をつかめるのは、オンラインイベントの大きな利点だ」と、クドラ氏はいう。「より広くオーディエンスにリーチでき、質の高いデータが得られる。とはいえ、デジタルイベントと対面イベントは相補的だ。いずれはインストアイベントも復活させたいが、最近立ち上げたオンラインイベントは、どれも今後も継続したいものばかりだ」。
Danny Parisi(原文 / 訳:ガリレオ)