ライブのスポーツの無期限中止を受け、アディダス(Adidas)は、そうした中止されたスポーツイベントのビデオゲーム化を進めている。 トルコにおいてアディダスは、今年の開催が中止され、1年延期になったサッカーのEURO(欧 […]
ライブのスポーツの無期限中止を受け、アディダス(Adidas)は、そうした中止されたスポーツイベントのビデオゲーム化を進めている。
トルコにおいてアディダスは、今年の開催が中止され、1年延期になったサッカーのEURO(欧州選手権)を「FIFA 20」PlayStation版ビデオゲームで再現した。同社は5月初頭からトルコで、サッカー選手12人対有名人12人の「アンキャンセルド・カップ(Uncanceled Cup)」の試合をFacebookライブ動画(Facebook Live)、IGTV、YouTube Liveのプロファイルに配信してきた。実際のトーナメントと同様に、51試合が配信される。ただし、決勝戦については、アディダスが現地のネットワークと交渉中で、テレビ放送される可能性もある。
「スポーツマーケティングは、製品発売やスポンサーシップ利用のあり方の重要な部分を占めており、こうしたアイデアを売り込まれる前のロックアウト初期段階においては、ライブのスポーツなしでは何をすべきかわからなかった」と、アディダスのトルコ法人でマーケティングディレクターを務めるハンデム・セレンクラー氏はいう。「我々にとっては試合がメディアになっていたのだ」。
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エレクトロニック・アーツとの取り組み
各試合は、ゲーム内で使われるボールとキットのロゴから、画面上で選手本人が着ているウェアなど、アディダスのブランドで溢れている。アディダスのエージェンシー、ワンダーマン・ トンプソン・トルコ(Wunderman Thompson Turkey)は、ライブのスポーツイベントにおいてファンが見慣れているティーザーや試合ダイジェストも制作中だ。
このバーチャルトーナメントでは、実際のトーナメントで同様のことをするのに掛かる費用の一部しか掛かっていない。ゲーム内広告の料金が安いということではない。アディダスが「FIFA 20」にロゴを入れることができるのは、ゲームデベロッパーであるエレクトロニック・アーツ(Electronic Arts)と契約を結んでいるからにすぎない。こうした契約は、ゲームや広告主、契約期間の長さによって50万~数百万ドル(5000万〜数億円)規模になりうる、とゲーム内インベントリー(在庫)向けアドテクベンダーのAnzuでCEOを務めるイタマール・ベネディ氏は話す。
「エレクトロニック・アーツとアディダスには実施できても、デベロッパーと広告主の99%は実施できない。すべてを適切にゲームにハードコード化するには多くの時間が掛かるので、このような契約でのアディダスからのコミットメントは重要なものになる」と、ベネディ氏は指摘する。
こうした契約は大規模なものになりうるので、広告主は、最終的にどれだけの価値があるのかを知ることが難しい場合がある。デベロッパーが広告主と多くのデータを共有することはめったにないと、ベネディ氏はいう。一方で、ゲームで利用可能な指標は、他のメディアとの誤った比較に用いられる傾向がある。ゲームのオーディエンスが、ジャージのような、「アンキャンセルド・カップ」用の公式商品の購入を促す広告でリターゲティングされるのは、それが理由だという。
「『FIFA 20』で行うことは、単なるブランデッドコンテンツ事業ではない。自社サイトがいまある唯一の販売チャネルであるため、戦略におけるeコマース部分は重要だ」と、セレンクラー氏は話す。
「ゲームの重要性が増しつつある」
PlayStationとのパートナーシップで、別のトーナメントを制作する計画がすでに進行中だ。ゲームがさらに主流になるなかで、ほかの市場での同様な動きも、アディダスにはプラスになるだろう。かなり長いあいだ、誰も表立って話そうとしないが、ゲーマーを自認する人が増えつつあると、セレンクラー氏はいう。
「ゲームの台頭は優先事項として常に検討材料だったが、いまは、eコマース事業との相乗効果を生み出せるので、重要性が増しつつある。パンデミックが終わっても、ゲームがまだ優先事項になっているだろう」と、セレンクラー氏は語った。
Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)