インタビュー

タカラトミーの新作!?半導体産業の「人生ゲーム」(等身大)が幕張メッセに登場、1ゲーム5分でプレイ無料

「学生たちに“半導体産業で働く人生”の魅力を知ってもらいたい」、CEATEC 2022の主催者企画

タカラトミーとのコラボで実現した「半導体産業人生ゲーム」がCEATEC 2022の幕張メッセ会場に登場。画像はブースのイメージ図。「半導体産業で働く人生」を1プレイ約5分間、無料で体験できる。各コマには半導体産業ならではの出来事が書かれているそうで、職種を選択したり、キャリアアップなどを経験できる。CEATEC 2022の幕張メッセ会場の会期は10月18日~21日。

 CEATEC 2022の目玉企画のひとつであるパートナーズパークでは、電子情報技術産業協会(JEITA)による主催者企画として、3つのテーマでの出展が行われる。

 JEITA半導体部会による「JEITA半導体フォーラム2022」、JEITAスマートホーム部会による「デジタル田園都市におけるスマートホーム」、そして、ALANコンソーシアムによる「最先端の水中光技術のデモを通して、快適になる水中世界を体感」である。

 なかでも、JEITA半導体フォーラム2022は、国内主要半導体企業8社が出展。各社の最新技術を展示するほか、来場者が体験できる「半導体産業人生ゲーム」を展示ブース内に設置。学生などが半導体産業で働くイメージを楽しく体感することができる。

 さらに、幕張メッセ会場でのライブ開催と、オンライン配信によるコンファレンスを独自に用意し、日本の半導体産業の現状と将来を示すとともに、学生や教育関係者、全国の自治体に対しても、半導体産業の魅力や可能性を訴求する考えだ。

 JEITA半導体フォーラム2022の展示内容について、JEITA半導体部会に聞いた。

「半導体を仕事にする魅力」を次世代に発信したい「国家安全保障の観点では、国家の命運を担う産業」

 JEITA半導体部会は、47社の半導体関連企業が参加。日本の半導体産業が抱える共通課題に対する解決を目指して、さまざまな活動を行っており、政府への提言や標準化事業、会員企業への情報提供や産業の発展を目指すための広報活動などに取り組んでいる。

 JEITA半導体部会としてCEATECに出展するのは今回が初めてとなり、「未来を創造する半導体産業の可能性や半導体を仕事にする魅力を次世代に発信する」ことをテーマに掲げている。

 今回の出展にあわせて「JEITA半導体フォーラム」という名称を新たに用意。ここからも、JEITA半導体部会が強い意思を持って、今回のCEATECの出展に臨んでいることが伺える。

 JEITA半導体部会 政策提言タスクフォース主査の三井豊興氏(=キオクシア)は、「ブースへの来場を通じて、半導体産業への期待感、さらに広がる可能性を体感してもらいたい。とくに学生たちに、半導体を知ってもらい、さらに、ジブンゴトとして捉え、働く場所の選択肢のひとつにしてもらえるきっかけにしたい」と語る。

JEITA半導体部会 政策提言タスクフォース主査の三井豊興氏(キオクシア)

 2020年度からスタートした半導体部会の政策提言タスクフォースでは、2021年5月と2022年5月の2回にわたり、政府に対して、「国際競争力強化を実現するための半導体戦略」を提言してきた経緯がある。

 半導体はデジタル社会において必要不可欠な製品であり、国民生活にも大きな貢献をするだけでなく、国家安全保障の観点からは、国家の命運を担う産業とも位置づけられる。提言では、政府に対して、新時代のサプライチェーン構築やカーボンニュートラル、次世代計算基盤の確保に向けての支援のほか、国際的な半導体支援策の潮流への対応、新たな時代の研究開発体制と支援、日本における電気料金や償却資産税などの負担軽減を行うイコールフッティングなどを盛り込んでいる。そのなかで、2022年5月の提言で新たに追加したのが、「半導体の人材育成と獲得」であった。

 初等教育から大学までを対象に、半導体に関するカリキュラムを導入し、半導体産業に就く人材の育成が必要であることを示している。

 三井主査は「主要各国政府による自国の半導体産業への大型支援が相次いでいる。提言では日本の国際競争力の観点からも、政府に対する支援を要望した」と前置きし、「産業を発展させるには各社のさらなる努力が必要であると同時に、産業を下支えする人材確保や育成が大切である。そこで、2022年の提言では、半導体の人材育成および獲得を目玉にした。小学生、中学生の頃から半導体に興味を持ってもらえることにも取り組みたいと考えており、CEATECでは、その取り組みの一環として、高校生、高専生、大学生を中心に半導体産業を知ってもらうための活動を行うことにした」と語る。

 半導体部会では、人材育成タスクフォースを通じて、2018年度から北海道、東北、九州の高専を対象にキャリア講演会を開催したり、2021年度からは大学にもその対象を拡大したりといった取り組みを行ってきた。また、JEITAのモデルカリキュラムを活用して、横浜国立大学と慶応義塾大学で、半導体に関する授業を開始している。さらに、小冊子を配布して、小中高校生に半導体産業に関心を持ってもらえるきっかけづくりにも取り組んできた。

 「日本の半導体産業は、世界で50%のシェアを持っていたこともあった。いまは10%を切っているが、世界で競争力を持つ製品が多いことに変わりはない。日本の半導体産業は、ここにきて復活の兆しをみせているが、少し前までは半導体不況という言葉が先行し、マイナスのイメージがあり、子供が半導体産業に就職したいといっても、親が反対するというケースもあった。CEATECでは、学生はもちろんのこと、親世代にも、これからの半導体産業が魅力的な産業であることを理解してもらう場にしたいと考えている」とする。

キオクシア、ソニーセミコンダクタ、東芝、ルネサス、ロームなどが出展「半導体がいかに社会で利用されているか」を展示

 JEITA半導体フォーラム2022は、2つのテーマによる展示と、4つの内容によるコンファレンスで構成される。

JEITA半導体フォーラム2022 展示の概要

 展示ブースでは、半導体が社会にどのように使われ、貢献しているかを、各社の展示物や映像コンテンツで紹介するゾーンである「展示エリア」と、半導体産業におけるさまざまな職種の広がりを体験・理解できるゾーンである「モニュメントエリア」を用意した。

 展示エリアに出展するのは、キオクシア、ソニーセミコンダクタソリューションズ、東芝デバイス&ストレージ、ヌヴォトンテクノロジージャパン、マイクロンメモリジャパン、三菱電機、ルネサスエレクトロニクス、ロームの8社である。

 「共同展示の形で総花的に見せるよりも、各社の特徴を出せるように、出展する8社が独自性を持てる展示内容にした。また、半導体そのものを見せるのではなく、用途の切り口から展示を行うことで、どんなところで、どう利用され、どう社会に役立っているのかを理解してもらえるようにした」という。

 展示エリアは、「Society/Smart City」、「Mobility」、「GX/DX」、「Energy Future」、「Sensing Society」の5つのテーマで分類。半導体の種別ごとの切り分けではなく、用途ごとの切り分けにしている点が特徴だ。

Society/Smart City

 「Society/Smart City」では、キオクシアがサステナビリティへの取り組みや、スマートシティにおけるフラッシュメモリやSSDの活用シーンを、ARを用いて紹介。

 来場者は、自分のスマホをかざすと、ショートムービーなどで説明を見ることができる。マイクロンメモリジャパンはデジタル社会におけるDRAMの役割を紹介。

 東芝デバイス&ストレージでは、パワー半導体の活用事例として、北海道・本州間直流連係設備に採用されているIEGTを紹介し、両面冷却によるスタック構造での高い放熱性や、気密封止構造による高い耐候性を実現している様子を展示物によって見せる予定だ。また、ルネサスエレクトロニクスがマイコンやSoC、アナログ半導体、パワー半導体を活用して、人々の暮らしを楽にするシーンを動画で紹介する。

GX/DX

 「GX/DX」においては、三菱電機が、パワー半導体や通信用デバイス、各種センサーを展示。脱炭素社会への貢献やDXへの活用といった切り口からの提案を行う。

Energy Future

 「Energy Future」では、ヌヴォトンテクノロジージャパンが展示を行う。パナソニックグループ時代からの技術を活かしたリチウムイオン向けバッテリーマネジメント技術や、水素社会の実現に貢献する水素センサーを紹介する。

Mobility

 「Mobility」では、ロームがパワー半導体における次世代技術のSiCパワーモジュールを展示。未来のEV向けに、走行しながらワイヤレス給電を可能にするインホイールモーターでの活用例などを紹介する。

Sensing Society

 「Sensing Society」では、イメージセンサーで世界トップシェアを持つソニーセミコンダクタソリューションズが、裏面照射型ToF(Time of Flight)方式距離画像センサーなどのセンシング技術を展示。ToF AR(SDK)の紹介とスマホで動作するVTuber向けアプリケーションのデモストレーションも行う。

 日本の半導体技術の先進性を理解することができるとともに、それらがさまざまな分野で利用されていることや、社会課題の解決に貢献していることが分かる内容になっている。

展示エリアのイメージ図

タカラトミーと連携した「半導体産業人生ゲーム」どんな出来事があり、どんなキャリアが待っているのか………?

 もうひとつの「モニュメントエリア」では、タカラトミーとの連携により、展示ブースの半分を使って「半導体産業人生ゲーム」が行えるようにした。

モニュメントエリアの解説

 人生ゲームを通じて、半導体産業で過ごす人生はどうなるのかを、楽しく体験することができる内容になっている。

 参加者は、参加カードを受け取り、ルーレットを回して、出た数だけマスを進む。30マスほど用意されており、半導体産業で働くと起こる出来事を体験しながらゴールを目指す。途中で職種を選択したり、キャリアアップなどを経験したりできる。一般的な人生ゲームと同様に内容に関連して「お金」をゲットし、終了後はその「お金」と引き換えにプレゼントがもらえる(学生のみ)。1プレイはおおむね5分程度が目安という。

 「若い世代の人たちに、半導体産業を、わかりやすく、楽しく、興味を持ってもらいたいと考えて企画した。半導体産業にはどんな職種があるのか、社会にどんな貢献ができるのかを知ることができる。理系の学生だけでなく、文系の学生にも参加してほしい」としたほか、「人生ゲームの体験を通じて、CEATEC 2022の思い出を、ひとつを増やしてもらいたい」とも語る。

 CEATEC 2022の人気展示のひとつになりそうだ。

学生向けの内容もアリ、「半導体人材イベント」開催

 CEATEC 2022の会場では、半導体人材関連コンファレンスが開催される。

 パートナーズパークのトークステージにおいてライブで行われる「学生のための半導体関連産業オープンカリキュラム」、「半導体人材育成地域産学官連携サミット」と、10月1日から10月31日まで、オンデマンドで配信される「半導体人材シンポジウム」、「半導体関連産業人材育成セッション」を用意している。

JEITAの半導体人材育成の取り組み

幕張メッセ会場では、10月21日が「学生の日」?学生向けイベントが多数開催

 幕張メッセ会場で行われる「半導体人材育成地域産学官連携サミット」は、10月21日午後2時30分から開催される。九州半導体人材育成等コンソーシアム、東北半導体・エレクトロニクスデザイン研究会、中国地域半導体関連産業振興協議会のほか、キオクシア、ソニーセミコンダクタソリューションズ、マイクロンメモリジャパンが登壇。熊本大学、東北大学、広島大学が参加し、半導体人材の育成に関するクロストークを行う。

 その後、同日午後4時からは「学生のための半導体関連産業オープンカリキュラム」が開催。これはJEITA半導体部会が高専を対象に実施しているキャリア講演会のCEATEC版に位置づけられるもので、学生を対象に半導体の産業動向や最新の技術動向について説明。会場に参加している学生や、オンラインで参加している全国の高専生が、講師に質問をすることができる。

 この2つの講演が行われる10月21日はCEATEC 2022の開催最終日となる金曜日。CEATECの開催プログラムを見ると、この日に学生向けイベントがほかにも多数用意されている。

オンデマンド配信のシンポジウムも開催

 一方、オンデマンド配信する「半導体人材シンポジウム」は、キオクシアの早坂伸夫社長による「半導体デジタル産業ビジョン」、半導体を活用するユーザー企業として、シャープやデンソーなどが登場する「半導体産業への期待」、東京理科大学の若林教授をモデレータに、CEATEC 2022に出展する8社の半導体企業の若手社員や、JEITA半導体部会長であるマイクロンメモリジャパンの小野寺忠代表取締役が登場して、半導体産業を目指す10人の大学生が持つ疑問などに答える「次世代人材クロストーク」の3部構成となっている。

 また、「半導体関連産業人材育成セッション」では、JEITAの半導体部会だけでなく、半導体装置メーカーが参加する日本半導体製造装置協会(SEAJ)、半導体に関する材料メーカーが参加する新金属協会、MEMS分野の産業化を推進するマイクロマシンセンターがそれぞれ講演し、半導体関連産業の魅力や人材育成の取り組みなどについて訴求する。

 三井主査は、「CEATEC 2022を通じて、幅広い人たちに半導体産業の重要性を知ってもらいたい。日本の半導体産業は、今後も競争力を高める必要があり、デジタル化やカーボンニュートラルなどの社会貢献においても重要な産業であり、そして、半導体産業は成長産業である、ということだ。CEATEC 2022の展示やコンファレンスを通じて、半導体産業の取り組みについて理解をしてもらい、半導体産業に就職してもらえるきっかけにしてもらえたら嬉しい」と語る。

 JEITA半導体部会によるCEATEC 2022への出展は、日本の半導体産業の成長に向けた地盤づくりにもつながることになりそうだ。