ビューティ

自動車部品メーカーのアイシンが美容業界に本格参入 “水”の力で髪と地肌をいたわる「ハイドレイド」の魅力を「レコ」の内田聡一郎代表に聞く

 大手自動車部品メーカーのアイシンが髪の内部と地肌に水分を届ける装置“ハイドレイド”を開発し、美容業界に参入した。“ハイドレイド”は空気中の水分子を髪の毛のキューティクルの隙間に入り込むほど小さな水粒子に変換。美容室でのカラーやトリートメントなどの薬剤浸透時間に使うことで、髪に含まれる水分と同じ性質の水を内側まで補給して、地肌をいたわり、髪の毛の柔らかさと艶を持続させる。開発の中心を担うアイシン イノベーションセンター AIRビジネス推進室の井上慎介室長と、いち早く“ハイドレイド”を導入した東京・渋谷にあるヘアサロン「レコ(LECO)」の内田聡一郎代表が、開発秘話やサロンワークでの活躍ぶりを語り合う。

睡眠の研究と自動車部品開発の
知見を生かして美容業界に参入

WWDJAPAN(以下、WWD):主に自動車部品の開発・製造を手がけるアイシンが美容業界に参入したのはなぜ。

井上慎介室長(以下、井上):当社は自動車部品のほかに長年ベッド事業を手がけ、私はこれまで睡眠の研究をしてきました。研究の中で睡眠時により快適な寝室空間を作るために、湿度に注目。効果を検証する中で、水分が増加する特殊な現象に気づき、技術解明すべく研究を重ねてきました。製品化を目指す中で、この技術を人に適応させることが一番の価値だと考え、さまざまな分野の中でも美容業界に目を向けました。

WWD:「水」に着目した理由は。

井上:睡眠は体がエネルギーを回復させるためのとても大切な時間です。極力体に負荷を与えずに、自然で良い環境を作りたかった。暑すぎても、光が強すぎてもいけないのです。人間の体は70%が水分で作られているといわれ、人にとって水は必要不可欠なものなので、水の活用を考えました。

ボタン1つで素早く起動
シンプルな動作設計が高評価

WWD:「レコ」ではいち早く“ハイドレイド”を導入した。実際にサロンで使ってみてどうか。

内田聡一郎「レコ」代表」(以下、内田):美容業界には数多くの機器がありますが、“ハイドレイド”はボタン1つで起動して、使いたいと思った時にすぐに使えます。何かをこまめに交換することや、給水も不要なので、とても扱いやすいです。さらに美容室に置くものはスタイリッシュであるべきだと考えているので、長年自動車部品を手がけてきたからこそのスタイリッシュなデザインも良いですね。

井上:電源を入れてボタン一つで動作するシンプルな設計は、まさに自動車部品開発の知見が生きています。空気中の水分を吸着して粒子化、適度な温度で吐き出す仕組みは、自動車の排ガス技術を応用しています。地球上どこにでも空気中に水分は存在しているので、電源さえあれば湿度の高低に関わらず給水不要で使えるんです。

WWD:「レコ」ではどのように“ハイドレイド”をメニューに取り入れている?

内田:ヘアカラー施術の放置時間に使用しています。当サロンはカラーユーザーが多いのでダメージに対するアプローチを大切にしています。ハイドレイドを用いた施術では薬剤の浸透を促進しますし、いわば水分補給をしながら施術できるので、カラー後乾かしたときの艶も実感しています。“ハイドレイドカラー”という形で通常のカラーにプラスの料金をいただいていて、付加価値の提供にもつながっています。“ハイドレイド”を当てている時はほかの機器とは異なり、蒸気や熱による“施術されている感”は正直薄いのですが、本質的に効果があるものは今後の美容業界で当たり前になっていくのではないでしょうか。

異業種ならではの
ブレイクスルーに期待

WWD:施術を受けたお客さまの反応はどうか。

内田:施術直後にその場でなかなか分かるものではないですが、色持ちや髪の触り心地など、後から実感されるお客さまも。導入してから日は浅いものの、必ず“ハイドレイド”でケアすると決めているお客さまもいらっしゃいます。

WWD:異業種から参入したアイシンに内田さんが期待することは。

内田:ほかの業界からの参入ならではのブレイクスルーをぜひお願いします!「その発想は無かった」という新しい視点がほしいですね。これまでの知見を生かしたドライヤーやヘアアイロンなどの機器を作っていただきたいです。

井上:技術開発を推し進めているので、今後の参考にさせていただきます。まずはデビューしたばかりの“ハイドレイド”において、美容師=プロの信頼を勝ち取っていきたいですね。

世界初のテクノロジー搭載
水分を補給して
柔らかさと艶が持続

 “ハイドレイド”は、水の力で髪と頭皮をいたわる世界初のテクノロジー搭載する美容室向けの機器。空気中の水分子を、キューティクルの隙間より小さい水粒子に変換し、髪へと届ける。カラーやトリートメントなどの薬剤塗布後の浸透時間を活用し、髪に含まれる水分と同じ性質の水を内側まで補給する。目に見えない極小の水粒子が髪の内部にまでしっかりと入りこむことで、キューティクルは柔らかくなり自然に閉じて、入りこんだ水分が定着。髪の毛の柔らかさや艶が持続する。空気中の水分を水粒子に変換するため給水不要で、シンプルな操作も魅力。現在は首都圏でのみ営業展開しており、今後は営業エリアを順次拡大していく。

※国内外論文及び特許のアイシンによる調査結果(2022年9月15日時点)
TEXT:NATSUMI YONEYAMA
問い合わせ先
アイシン
0566-62-8130