これまで経験したことがないほどの高齢化社会へ突入している日本。年金、社会保障、現役世代との摩擦など問題は山積しています。

それらの課題解決のため、福祉制度ではなくテクノロジーで挑もうという取り組みが、IBMのWebメディアMugendai(無限大)にて紹介されていました。しかも利用される技術はVR(バーチャルリアリティ)だというのですが、はたしてどのような取り組みなのでしょうか。

ゴーグルだけがVRじゃない。物理的な障害を越えることで実現する世界

VRと高齢化社会。とても関係があるように思えませんが、この大胆なプロジェクトのマネージャーを務めるのは、VR研究の第一人者であり、東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター 機構長の廣瀬通孝教授なのです。

VRと聞いてすぐに思い出すのが、ヘッドマウントディスプレイ。大きなゴーグルを装着し、上下左右に広がる映像を楽しむことができます。廣瀬教授はこの仕組みをさらに進化させ、足を動かして移動、物をつかむために手を伸ばすといった動作を取り入れることで、身体を忠実にトレースするインターフェースをつくっているのだそう。

教授いわく、VRの根底には「コンピューターを介することで、現実世界と一味違った世界をつくれる」という基本があるそうで、例えばVRを活用して物理的な移動をなくせば、高齢者の活躍の場は広がり、社会問題の解決につながるというのです。

教授はこれを「バーチャルな世界を作れば、高齢者もスーパーマンのような身体を持つことができる」と表現します。

高齢者を合体させて一人に? 企業も労働者もWin-Winとなる新しい働き方

教授らが取り組んでいる施策の具体的な例として挙げられていたのが、「Mosaic型就労モデル」と呼ばれる新しい働き方。これは、例えば英語が得意な人、経理が得意な人などをネットワークを介して集め、一人ひとりが持つ強みを1つのバーチャルな人格に統合するというまったく新しい発想です。

これにより「週何日、何時間だけ働きたい」といった希望をかなえることができ、雇用する企業側のみならず、働きたい・社会に貢献したいと考える高齢者にとっても有用な仕組みとなります。

超高齢化社会に「VR」で挑む東大教授。その大胆な発想とは
Image: Mugendai(無限大)

その他にも、各地に居住するシニア人材と仕事やボランティア活動などのマッチングを行うWebシステムである、「GBER」(ジーバー:Gathering Brisk Elderly in the Region)や、よりハイエンドな求人要件を扱う「人材スカウター」など、教授らは多くの実証実験を繰り返しているそうです。

広がる未知の可能性。「高齢者に対する思い込み」がチャンスを奪う

廣瀬教授は高齢者の就労に対し、ある種の「思い込み」がその可能性を大きく毀損していると語ります。

例えば前述したGBERは、高齢者就労の中でも実生活に密着した案件が中心ですが、現時点で登録されているのは草刈りのような単純作業がほとんどで、スキルの多様性がまだまだ十分ではないといいます。

廣瀬教授はこの現状に「高齢者だから簡単な作業をお願いしよう、という意識が勝ってしまうのかもしれない」と指摘し、以下のように語っています。

高齢者だから弱いとか、能力に限界があるとこちらが勝手に想像してしまうのかもしれません。繰り返しになりますが、決してそんなことはありません。

超高齢化社会に「VR」で挑む東大教授。その大胆な発想とは
Image: Mugendai(無限大)

現代の日本が抱える最大の問題ともいえる少子高齢化に、「テクノロジー」の力で挑もうとする廣瀬教授の奮闘は、Mugendai(無限大)にてぜひ続きをお楽しみください。


Image: Mugendai(無限大)

Source: Mugendai(無限大)