日経BPは、マーケティング専門メディア「日経クロストレンド」が作成した「技術」「マーケティング」「消費」の潮流を見極める「トレンドマップ 2020冬」を発表した。分析結果は、「現時点での経済インパクト」と「将来性」の2つのスコアでマッピングしている。
 
各分野でスコアを伸ばしたキーワード(2019年夏調査との比較)
各分野でスコアを伸ばしたキーワード(2019年夏調査との比較)

技術分野は、新キーワード「都市OS」が急浮上

経済インパクトの1位は「スマートフォン」で、スコアは5点満点中の4.75となった。これは、18年夏、19年冬、19年夏の調査でも同じ結果である。一方、将来性の1位は「AI(人工知能)」で、スコアは4.64。引き続き重要キーワードとしての認識が強く、経済インパクトも高く評価されている。また、AIに続いたのが、「自動運転」。そして、モノのインターネット「IoT」、新たな通信規格「5G(第5世代移動通信システム)」が、上位に挙がっている。
技術分野では、今回の調査から「都市OS」「遠隔医療」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「バーチャル・ヒューマン・エージェント」という4つのキーワードを追加した。

都市OSとは、交通や医療、エネルギー、流通、観光など、さまざまなデータを横断的に収集・整理したデータ連携基盤のこと。今年1月には、トヨタ自動車が未来都市構想「Woven City(ウーブン・シティ)」を発表するなど、未来のまちづくりに対する関心が高まっており、将来性スコアでも上位につけた。
技術分野のトレンドマップ
技術分野のトレンドマップ

マーケティング分野は「D2C」に注目

マーケティングの経済インパクト、将来性スコアの1位は、いずれも「EC(ネット通販)」となった。一方、前回の調査から大きく将来性スコアを伸ばしたのが、「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」。D2Cとは、顧客に直接商品を販売するモデルのこと。今年2月には、丸井グループがD2Cの支援に特化した子会社を設置し、D2Cを丸井が目指す次世代店舗の戦略の要に据えるなど、期待感が高まっている。
また、マーケティング分野では今回の調査から「SDGs(持続可能な開発目標)」「ファンベース」「アドベリフィケーション」「信用スコア」という4つのキーワードを追加した。このうち、「SDGs」は将来性スコアで2位につけており、関心の高さを物語っている。

消費分野は「キャッシュレス決済」と「MaaS」に注目

消費分野の経済インパクト1位は「コト(体験)消費」。2位の「キャッシュレス決済」は、将来性スコアでも2位につけた。PayPayを筆頭に、積極的なマーケティング投資が行われているうえに、2019年10月の消費税率引き上げに伴う「キャッシュレス・消費者還元事業」を受けて利用者が急増していることが要因となったようだ。
また、将来性スコアの1位は「MaaS」。MaaSとは、あらゆる交通サービスを統合し、1つのスマートフォンアプリを通じてルート検索、予約、決済機能にアクセスできるようにするサービスのこと。日本ではトヨタ自動車の「my route(マイルート)」や小田急電鉄の「EMot(エモット)」など、各地でサービス展開がスタートしている。

最近では、MaaSアプリに飲食店のサブスクリプションサービスを取り入れたり、マンション住民向けにオンデマンドの乗り合いバスを提供したりするなど、他産業を巻き込んだ取り組みが進んでいる。こうした点にもMaaSへの期待が高まっていると見られている。