WACULの社内研究所であるWACUL Technology&Marketing Lab.は、コロナショックが社会に与えた影響に関するレポートの第2弾を公表した。

これは同社が提供するPDCAツール「AIアナリスト」を活用し、ゴールデンウィークを含む5月の1ヶ月の実績を含めて、訪問数およびCVRの推移を業界・セグメント別で分析。デジタルマーケティングの観点から、特に動きのあった業界についてまとめている。

B2Bクラウドは好調維持、会議システムに追い風

まず、季節性をものともせず高水準を維持しているのがB2Bクラウドサービス。絶対値でみると4月からは需要が落ち込んでいるように見えるが、ゴールデンウィークは通常B2Bクラウドにとって閑散期となるが、前年度比で166%を記録し、引き続き好調を維持した。これはCVRの推移でも同じ傾向があり、CV数も相当数増加していることがわかっている。
なかでも爆発的に需要拡大しているのが遠隔会議システムだ。「Zoom」のようにリモートワーク中でもWeb会議を行えるシステムや、PCを使って電話ができるIP電話システムなど、遠隔での会議・通話に関するクラウドシステムが好調に推移している。訪問数の前年同月比で見ると4月は1144%、5月は893%となっており、コロナ需要を機に、遠隔会議が社会の「ニューノーマル」となりそうだ。
続いて、職種別のクラウドツールの推移を見ると、営業・マーケティング系については、5月は2020年初頭の水準に落ち着いてきた。安定的な成長軌道といえ、ほかのセグメントに比べるとバブルといった特徴は見られない。営業まわりで需要は強いと言えど、広告宣伝費の抑制など「攻め」の投資は控える傾向も見られるため、コロナ禍においては、ゆるやかな追い風といえるかもしれない。

また、事務効率化ツールでは、追い風も向かい風も受けている。3月は訪問数は前年同月比107%で、CV数は同29%と大きく低迷。なかでも、導入に時間のかかる「コア業務」に近いツールでCV数が減少していた。大きな意思決定をすることが難しくなった企業で、情報収集も含め、需要の急速な減退がおこったことが予測される。

旅行業界は大打撃、代理店のサイト訪問数は8割減

旅行業界ではコロナショックが向かい風となり、甚大な被害を受けている。ゴールデンウィーク期間も外出自粛であったため、移動先での宿泊、アクティビティなど、すべてのセグメントで推移が激減した。

旅行業界に関連するWebサイト全般の推移を見ると、2019年12月から訪問数がみるみる減少。4月には41ポイントまで落ち込み、緊急事態宣言が解除されつつあった5月にやっと回復してきた。前年同月比で見ても、4月は-65%、5月は少し戻して-55%となっており、大底は脱したものの苦しい状況が続いている。

CVRも低下傾向は変わらず、2月と4月は業界で初めて100ポイントを割り込んだ。予約などのコンバージョンに至るまで、客足はさらに遠のいているようだ。
そんななかで、回復の兆しが見えるのはレジャー施設だ。緊急事態宣言以降は閉鎖を余儀なくされ、宣言解除後はゆるやかに営業再開しはじめた。そのため、従来通りの営業は出来ていないものの、5月のWebサイトへの訪問数は増加。前年同月比でみても、4月は-7割まで落ちたが、5月には-4割まで回復してきている。
一方で、最も明確にコロナショックの悪影響がみられるのが旅行代理店。サイトの訪問者数は4月に22ポイントまで落ち込み、5月は26ポイントと微増と、前年同月比で8割減の状態が継続している。

ゴールデンウィークは夏季休暇の旅行先を検討する人も多い時期であったはずが、今年はまったくその傾向がなかった。CV数(ツアー予約)も同様に、4月に9割減となったまま、5月も回復を見せる様子はなく、依然として厳しい状況が続いている。

ブライダル業界も悲鳴、新郎新婦の動きに変化も

ブライダル業界も、向かい風を受けている業界のひとつだ。コロナ禍では多くの新婚カップルが、結婚式をあげるのかを悩み、新婚旅行もキャンセルするなど、人生の大きな転機を左右する事態になっている。

この業界を「結婚指輪」「プランナー」「フォトウエディング」の3つのセグメントで見ると、4月5月の動きにそれぞれ差が見られた。「結婚指輪」は前年同月比で回復、「フォトウエディング」は横ばい、そして「プランナー」はさらに下落していたのだ。結婚を控えていた人々の多くは決断を先送りしていたのかもしれないが、一部の層では「まずは結婚指輪から」と動き出しているのかもしれない。